透視図法/佐々宝砂
 
家族愛はすべてこれを禁ずる。
愛は諍いの源であり、
家族を無謀にも守ろうとするときの愛こそは、
もっとも危険な諍いを生むからである。

落ちてゆく者は、
落ちるがままにとどめる。
かれを助けんとする者は罰せられ、
短縮法のひずみに囚われる。

かすんでゆく過去は、
かすんでゆくに任せる。
それらを強引に明らかにしようとする者は、
消失点の彼方に葬り去られる。

うがった物言いは賞賛されるべきである。
大きな嘘は大きいほど賞賛されるべきである。
嘘は諍いを生まぬ。
真実は諍いの源である。

透視図法の国家に真実は存在しない。
あるいは存在を認められない。
本来は透視できぬものを透視する虚偽によって、
透視図法の国家は成立する。

再び言う、
家族愛はすべてこれを禁ずる。
何者も守ってはならない。
この言葉もまた、

守られてはならない。
戻る   Point(2)