ゆらり/灰野
揺らぐ音によって
支えられる日々
わたしは鼓膜に偶然を装って
きみに「好き」と云った
美しくなる途中に
きみは止まったままで
笑った
笑いながら「面倒だ」と云った
そういう態度をわたしはとても気に入って
消えていく途中に覚えているのなら
きっとこの先にも会える気がしたんだ
きみはわたしのすぐに難しく考える癖を笑った
わたしはそれすらも難しく考えてしまった
輪郭はもう忘れた
名前は辛うじて覚えている
「笑っている間は忘れられるの」
そんな事を云ったら
「それくらい知ってるよ」って苦笑していたね
愛しい理由は分からないって思ったけど
きみはもう大人になってゆくの
わたしはいつまで子どものまま?
「こっち向いて、笑わなくても去らないよ」
いつの間にか泣いていたけど
それは見られたくなかったから「頭痛がする」と逃げた
でも本当に頭が痛くなったんだ
強い頭痛が消えないのは
いつまでも虚空の中に取り残されたままだから?
終わりは見えないまま
虚空はゆらりとシャボン玉のように所々に浮かんでいる
戻る 編 削 Point(1)