弁当やの麦茶/乾 加津也
「はい、二五十円ね」
安さ(そこそこうまい)が自慢の弁当や
座って食べれる気さくなところ
小さな厨房は午前二時から真夏の修羅場で
汗と油と大さじ少々がフライパンのような熱でうたって踊る
笑う三つの前掛けは薄っぺらでよれよれで
かがんでおちる肩紐を幾度も幾度もかけなおす
二十リットルは入るであろうレバーコック式のドリンクキーパー
氷山のかけらとたっぷりの麦茶をほうりこんで
「ご自由にお飲みください」の台の上に鎮座する
「はい、二五十円ね」
昼過ぎには はやくも閉めの準備だ
あまったてんぷらもゆで卵も捨て値でどんどん放出される
すでに客も少なく このところいつ
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