熱帯夜/
木屋 亞万
文明都市
よく知りもしない遠くの国
もうそこにしか人間はいない
排ガスと熱風をまき散らす車
川も生き物もせき止めるダム
風を通さない高層ビルと
熱を集めるアスファルト
生き物の気配はない
人間らしい人間は
もう文章の中にすら
なかなかいません
熱い夜に骨が溶けてしまいそうで
皮膚は熱く、汗一つ出ない
死ぬときに自分のために泣くものはいない
自分すら泣かない
舌が苦い熱帯夜
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