ピーマンの個性 (想起させるものに、忠実に)/乾 加津也
君はたしかに一介のピーマンだったが
人間工学をあざ笑ったのであろうか
一塊(ひとくれ)の粘土をしぼりとった手ごたえと
大胆なくびれ はじける地肌が第一印象なのだ
小麦色の少女のはちきれんばかりの笑顔でもあり
はたまた
陽が落ちて
麦藁帽子をむしりとる農夫の
その日一日分の労働力のような
水などかぶった活きのいい奴なのだった
それから
大地ととり交わしたであろう膨大な駆け引きを見たおもいがたかまり
ああ ここに一介のピーマンありき と
ぼくは宝塚風に脇役をあまんじるのであった
十数分後
腕捲りなどしたぼくに無理やりさばかれ弾きとばされ
きゅうきゅう音を上げ味つけされて
立派にぼくの腹へと旅立った地球戦士ピーマン
君の個性は
今度はぼくの激しい体内で
ぼく自身を演じきれ
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