ジュリエットには甘いもの 中篇/(罧原堤)
った。昔、住んでいたアパートの2階の四畳半の部屋にいたんだ。目頭が熱くなって、僕のほほを涙がつたった…… 懐かしくって、懐かしくって、どうしようもなかったな……」
「熱い、熱いって、あなた、私が話した菌みたいな人ね。それはいいけど、ほんとに中学生の頃に戻れたの?」
「ほんとさ、一日だけだけど……」
黙り続けていれば当時の感情をともなったままそれからのいろんな出来事を脳裏に再生できそうだったけど、思い出に耽ることはやめ、言葉を続けた。「仕事が終わって家で泣いたりしてたな。涙が出て……、一人暮らししてたんだけどね。仕事が終わって自転車でマンションまで帰り着いてさ、それですぐC D聴いて泣いてた
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