ジュリエットには甘いもの 前編/(罧原堤)
ままに、あるがままに振舞った。とるものもとりあえずペンシルを握り締めせかせかと溢れる言葉をノートに記しだしたりして。
5 オアシスに辿り着かねば、清潔ではいられない
岩かげに男が寝ていた。ここをねぐらとしているのだろう。貧しい装いをしている。どんな奴かと、うす暗がりの中、目をこらした。まだヒゲも生えそろっていない若い男だ。ややたれ目の。声をかけてみる。反応なし。よく熟睡していた。だらしなく伸ばした腕の先に靴を転がして。──禍々しい者ではなさそうだった。それにここはそこはかとなくいい雰囲気。ただならぬこともなさそうで。そう感じた。直感で。今夜はここで夜をしのごう。男は相変わらず
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)