ジュリエットには甘いもの 前編/(罧原堤)
。俺より優れた奴がいるかよ。どんなことやるにしたってよ俺のような精神修行してる奴の絵があるだけで周りの奴らの感化になるのにもったいねえ。俺の描いた絵を見ねえとは。信じられねえ。なぜなんだよ。どうしてだよ。教えてくれ。わかんねえんだよ! 先がねえよこのままじゃ。ゆく先がねえよ。世間があまりにもバカだから! つった思い上がりが微塵もねえ。この絵にあるのは純朴さだけだ。そこが確かにグッとくるのかも知れない。味がある下手くそな歌手のほうがぐっと琴線に触れるごとくに。そう、うまいオペラ歌手の、『どうだ、わたしたちはむっちゃ巧いでしょうが!』っつう、そんな思い上がりが鼻につく感じがねえ、そこに奴らは何か感じる
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