「遠ざかる季節に向かって、さよならを言うまえに」/
ベンジャミン
夜の匂い
風にのって運ばれてくる秋の気配
近づいてくるものがあるとき
遠ざかるものがあることを
忘れないでいたい
街灯の下に積まれた
夏虫の死骸をよけて歩く
漂う余韻
一つの季節を懸命に生きた
そんな抜け殻を南東の風がさらって行く
遠ざかる夏に向かってさよならを言うまえに
同じ風に吹かれながら
まだこの季節にとどまろうとしている自分を
静かに感じている
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