暮らし/霜天
夕日は傾く時間を知っている
その頃になれば
世界がゆっくりと閉じていくことも知っている
背中で、背中ともたれあう
隙間の部屋
四角いスイッチで昼と夜とを切り替えて
のろのろと、立ち上がる
空間がそれに倣って
ここという
存在を、確かめることが出来る
いつだったろう
まだ未来が遠かった頃は
君と僕と
繋いだ手の範囲が
大きく
空でも抱えていけるくらいの
力強さだった
ように
思う
僕等が
僕等の範囲を知ってしまうということ
広げた両手と、こころ
夕日が傾いていく時間を
知っているということ
今
蛍光灯の明かりが届く範囲
の、世界で
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