白日/salco
除隊
のどかな春の空の下
今は嘘のように静かな此処ら
気紛れな線を描いて
一対の蝶々が
じゃれ合うように飛んでいる
「お前さん達は何処に隠れていたの?」
誰一人助からなかったこの場所で
前線は遥か遠くに移動した
その轟きさえ此処ではのんびり間遠くて
お喋りなヒバリの囀りに消されがち
それよか此処はしんとして
草いきればかり立ち上る
高い雲がゆっくり過ぎて行く
地面には赤いりんどうが咲いている
頭は堅牢なヘルメットの中
ポケットには書きかけの手紙が入っている
彼はやっと今日
これらの装備を脱ぎ、銃も弾倉も放り投げ
大笑いしながら
懐かしい人々の胸
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