透明人間/くなきみ
誰も僕のことなんか見えてない
僕の体はちっとも透明じゃないのに
僕とすれ違う人達は
僕の体を通り抜けるように過ぎていく
僕が腕を掴んでも
まるで木の枝にでも引っかかったかのように
僕の手を振り払って去っていく
大声で叫んでも誰にも聞こえてないみたいだし
暴れても誰も止めてくれないのだ
まるでこの世界には僕がいないみたいだ
僕は何とかして自分の存在の証を残そうと
町の中心にある一本の大きな木を倒してしまおうと思った
そうすれば皆が僕の存在に気づいてくれるはずだ
そう思ったのだ
僕は一晩かけてようやく木を切り倒した
とうとうやったぞ
町のシ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)