レンジ電子 (想起させるものに、忠実に)/乾 加津也
ほんとうは
レンジであたためなんてとんでもない
だーくな箱の中にとじこめて
ボタンを何回かピッピピッピ押して
なにかされるんです
ひきつって声も出ないたぶん食べものが狂い死んで
あたためられて出てくるんです
それをむき出しの歯でガツガツ食べて
たぶん何かの赤外線の親戚みたいなものの返り討ちにやられて
どこかの臓器が焼けただれるんです
でれぇ〜ってなるんです
医者にみてもらうのだけれど
「どこも悪くないですよ」といわれるのはわかってて
そうやって人間不信もはじまるんです
みんなひとりひとり他人だから
じぶんのレンジでチンしあって
いきるためなら何でもするんです
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