スカイ・フィッシュ/千波 一也
 

なんて哀しくて
それゆえ温かくて
自然とぼくは
笑い顔になる
涙がつたっても不思議のないような
笑い顔になる

寝転んだ芝生のうえで
ぼくは片腕をすうっと伸ばす
この腕が何百本
いや、何千本つながれば
空とかっちり結ばれるだろう
そんな夢の途中で
まどろむぼくは
空に釣られる青魚
まだまだ自由にとまどうくせに
自由を誇るうろこのひとつ

真夏が飲み込む空のもと
風に揺られて
ぼくは見ている
水面みたいな青の向こうを
ぼくは見ている
切ないくらいに小さな呼吸で




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