朝/salco
 
8時20分過ぎ
小洒落れた賃貸マンションの前に幼稚園のバスが来て
長男を送り出すと
夫婦はベビーカーを押して通りを渡り、家へ戻る
梅雨明けが発表された翌朝
アスファルトは早くも紫外線を乱反射して
若い父親は道行く中年の女達を指し
ほら、みんな帽子を被っているだろう? 
と、
帽子を厭う1歳半の長女に説得を試みなければならない
長女は帽子よりも本当は
ベビーカーに乗せられていることが気に食わない
かと言って歩きたくもないので
帽子と青空と両親にむかっ腹を立てている
育って行かねばならない厖大な時間と
自由という観念の挟間で、
つまりはベビーカーの上で、
存在すること
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