めぐり きざし/木立 悟
満ちては落ちる
満ちては落ちる
何も何も
示さぬいかずち
此処ではない
何処でもない
歩き歩く
踏めるものをゆく
蝶の寄り付かない花々を
蜘蛛を殺すことのできない指で
水辺に水辺に水辺に移す
息と光にうつむきながら
灰に記され 緑に記される
離ればなれの空たちが
生きものの名を欲めて並んでいる
次の次の季を踏むものの名を
水の道をゆき
跡を消し
雲母の風
午後をめぐり
かちりかちりと
空はつながる
欠けたものらが
かたちをまさぐる
色の失い間を埋める午後
緑を渡り夜は来る
手からこぼれ 崖を落ち
別の命を連れて来る
様々な杯をかかげながら
雨のなかを集うもの
鈍と玻璃の揺れの上を
兆しはすぎる 夜はすぎる
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