裾をめくった/嘉村奈緒
 
男の顔は漫画みたいにペラペラで、瞬きをするたびに違う形になっていくのを静かに観察した。
カーテンが開いているときは真昼だった。女も明るいのだろうか。
閉められたり、開けられたりして、忙しないものなのだろうか。女というものは。
それから女のスカートの裾をめくった。わたしが見たもの、あれは、





夜は肥大していって
わたしの部屋は夜になった
手探りで人体模型を引き寄せる
関節と関節の隙間から海の匂いがする
夜な夜な、どこに行くのだ、おまえは
恥ずかしい顔もせず
おまえは、まるで漫画のようだ
おまえは、裾をめくるのか、などと言って
話し掛ける
そうじゃない時は、夜の裾を
めくる



裾をめくりあげるとめそめそし始めるので
女みたいだな
と思う

 
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