保存しますか?/ホロウ・シカエルボク
判っていたはずなのに
あのころ、そうだ
あのころ市営球場の側にあった
屋外プールが大好きだったなぁ
球場のスタンドみたいなプールサイドで
お好み焼きや焼きそばを売っていたっけなぁ
それはいまではもうなくなってしまった
繋がらなくなったアドレスみたいに
狂ったような陽射しの記憶の夏が
頭の中で薬臭い水を跳ねている
インスタントコーヒーを飲みほした
歯を磨いた
口をゆすいだ
服を着替え
荷物を確かめ
時計を見たら
今朝の配列のすべてが
クロゼットの中でごちゃまぜになった
そのときちょうど
針は七時を指していたんだ
未整理のファイルボックス
それが
日常ってやつだ
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