ぼくらの原始人/yo-yo
 
耳を立てて
虹の匂いを嗅いでいる
そのとき
雲を背負って
ぼくらの原始人が現われる


原始人はときどき血痰を吐く
ひそかに獣を食ったのかもしれない
あるいは体の中に獣がいるのかもしれない
おれは退化しつつある人間だ
と彼はいう
エクセルの操作も忘れた
もう敬語も使えない
ひげも剃らない


川岸に並んで小便をする
砂のちんぽは青い唐辛子ばかり
ひとりだけ毛が生えている
首がみじかくて猫背
歩くのも泳ぐのも鈍重
だが古い時代を知っている


水よりも青い
夏の空は蜻蛉の空だと
原始人がいう
水から生まれて水に帰る
蜻蛉の羽は空の地図のようだ
[次のページ]
戻る   Point(8)