浴衣花火/光井 新
あーらよっと、こんな風に、どじょうならいくらでもすくいますから、お代官様、この子はどうか勘弁してやってくだせぇ。この子には来年の夏がありやす。父親のあっしが不甲斐ないせいで、今年は浴衣を着せてやる事ができやせんでしたが、来年の夏こそは、浴衣を着せて花火大会に行かせてやりてぇんです。
「粋だねぇ、金魚屋小町」なんて長屋の奴等にからかわれながら、楽しそうに下駄を鳴らして、「お父さん、早く早くー」って手を振るんですぁ。そりゃぁ恥ずかしがりますけどね、内心は嬉しくてたまんねぇんです。「勘弁してくれよ」って口では言いますけどね、「よっ、お池の大統領!」って呼ばれんのも悪いもんじゃねぇっつうか、娘にもいい
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