わたしと せめて/乾 加津也
せめて はいさぎよい
悔いにのみこまれてもその上に震えたつ
涙もかれた花のいろをしている
せめて はもとめない
とうめいになったからだで小さなものたちを拾う
どんなにこぼれても心のありかを失わない
せめて はみなぎるちから
たましいって何ってきかれるところ
さざなみのように かならずおしよせる期待
いくつかの泥をかぶって不幸せそうな顔をしていても
せめて といえる日をもとめて
わたしはいまもじぶんだけのことばをさがしている
だが探しつづけてわかる
せめてがのびやかな 羽化をもとめるということ
意志は声をもつのだろうか
それともわたしか
◇ ◇ ◇
散歩にでる
あせりでできたたいせつな闇を抱えていた
雨にうたせてもよいものかまよっていた
だれかとのすれ違いざま
覗きこまれるのが怖くなって
あわててポケットの奥におしこんだ
(緑川 ぴの さんの作品にインスパイアされて)
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