スパイラル/千波 一也
固く
手と手を結び合って
地上へと落下していく
ダイビングみたいな
加速度で
八月は
僕らの肌を
隅の隅まで染みわたる
皮肉にも
僕らはさほど一途じゃないし
さほど薄情なわけでもないから
八月はいつも眩しくて
だからとりわけ
海風がなつかしくて
新鮮な
果実をよそおい
膨らんでいく
記憶と
においを
誘って僕らは
この世はかつて
さくらんぼだったかも知れない
無知で
無邪気な生命に
やさしくかじられる
さくらんぼだったかも知れない
もしかしたら
今もなお
そういうスタンスであるかも知れないけれど
果樹園に吹く風たちは
そう
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