美しい世界/はるな
 
乳ぶさのかたちをしたくもが
夏空に憂いをあたえている

満員の最終列車が
日付のさかい目で迷子になる

聖人のため息が
夕刊とともに2セントで売られる

ああ
古着屋で
はかり売りの性器を
四つ 買った

立ち枯れたばらのつるが
保育所の日陰で生きのびる

色のしろい赤ん坊が
虚空から蜘蛛をひろいあげる

退屈した少女たちが
教会の屋根を虹いろに染め上げる

ああ
こんな日に
僕の手は湿っている

濡れたパレードが
らせん状の感嘆を放りなげる

ああ
人びとが
気づき始める

愛が
充満する




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