「 うつる季節に 」/椎名
通いなれた道
住み慣れた家
そうして
一緒にいることに慣れきったふたり
あたりまえの毎日が
黙々と流れ
口にできなくなった言葉が
行き場を失いふきだまりになる
いつかそれが
大きな塊になって
のしかかってこなければいいと
願いながら
月日は静かに流れていく
季節が移り変わるように
人の心も変わり続ける
見慣れた顔
聞きなれた声
おそらく
行動パターンまでにも
慣れきっていく
いつか
気がつく
風が吹き始めることに
冷たい
秋の風が
いつまでも
春のやさしさを持ち続けられればいいのに
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