ふぶけ量子力学のさくらたち/天野茂典
 

 も元気だ菊の花はたえないがいまでも
 自分で歩いている飯を仏壇にそなえ
 ている死者とのささやかな交信は
 そんなちいさな日常が果たして
 いるのだろうほとぎすがさい
 ているに庭にでて水をやる
 のも母の日課だ雨ばかり
 の十月は桜も咲かない
 たそがれの月 日も
 ささない越境の橋
 跨ぎこしながら
 みそはぎの紫
 に酔う冥界
 からの通
 信はた
 えた
 あ

 父に会いたい
 体温を
 計ってやりたい
 この寒さのなかで
 震えている
 父の寂しい唇がみえる

 

 ふぶけ
 量子力学のさくらたちもみじのように



                  2004・10・15
戻る   Point(4)