水のテーゼ/umineko
水の上を、滑るように。友人があきれて忠告する。あせっちゃだめだよ。ストロークとストローク。その間をゆったりと。うん。そうだね。やってみる。
最初の数ストロークはいいのだ。だけど、すぐにあわあわして、あわれな柴犬みたいになってしまう。何かが違うんだよね。それがなんだかわからない。
あなたをつかもうとして。手を伸ばして指に触れた。あなたがやさしくないことを、私は瞬時に理解する。それでも。
あなたを追いかけた、あの夏の日のように。
私は泳ぐ。水は私を、いつか許してくれるだろうか。
あるいは、夏のあなたのように。
やさしいふりで遠ざかる。
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