かくすればかくなるものと天邪鬼/板谷みきょう
 
去ってしまったあの人は、拙文に対しても
作品として本質を見出そうと温かく優しい眼差しを以って
努力して読んでくれていました

去ってしまったあの人は、現代詩が成立するには
作者と読者の双方に各々の立場に応じて
思いやりや、いたわりや、慈しみなど
相手に対する想像力に頼る必要があることを
こっそりと教えてくれました

去ってしまったあの人は、ひねくれたり
すねたり、卑屈になってまで殊更に
正しいと自分を主張する姿は
愚かで醜い心の有り様だと言っていました

去ってしまったあの人は、悪いのは他人で
いつも傷付くのは自分だけ
誰もそのことに、気付いてくれない
そんな勘
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