立会川のひと/恋月 ぴの
 
振って
複雑な家庭環境とか中学受験のストレスを僕だけが受け止めることできたんだ

彼女は初恋の相手だったし何よりも彼女のこと僕は大好きだったんだ

私でも知っているモデルさんがそのときの彼女だって彼は呟いて

そんな彼女の身代わりでも欲しいのか
その夜から逢うたびに変態じみたことせがむようになった

はじめは好奇心あったんだけどね

彼が弱電関係の会社へ就職したのを機に彼との関係を絶つことにした

関連会社のお嬢さんと結婚したって人づてに聞いたけど
あんなこと奥さんにもせがんでるのかな

多少なりとも立合川の水質も改善されてきたのか
ボラの大群が川幅いっぱいに遡ってくるとニュースでやっていた

夏の夕方になると運河沿いらしい潮臭さに満ちていて
いつ洗ったのか判らないような汚れたシーツに青白いもの滑っていて

「夜が明けたら一番早い汽車に乗るから…」

あれは浅川マキってひとの歌だったような







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