わたしがシャンブロウだったとき/佐々宝砂
鬼ではないけれど
わたしのキスを待っていてはだめ
そらごとそらみみそらなみだ
そら、かもしれない
から、かもしれない
夕暮れのそらには今も火星
その赤い光に背を向けてわたしはねむる
わたしはもうシャンブロウでない
わたしの食べ物が何かなんてわからない
わたしの言葉があなたに通じないこともわからない
そら、と唱えて髪を結い
から、と唱えて眼鏡をかけて
わたしは北西のそらに幻の惑星をみる
ごめんね
わたしはもう
シャンブロウじゃないの
あなたがまだ
あなたのまま逃げ遅れているとしても
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