狩る トンボ/砂木
こともできない
鳥か また蟻に狩られるのか
じっと立ち竦んでみつめると
色のない手足をバタバタと動かし始める
私はね ムカデの子を殺虫剤で殺したんだよ
助けられないんだよ
ああ 違う 私はあなたを殺す気はないよ
でも 助けられない
また馬鹿げた自問自答の中で勝手に怯える
こんな雨の朝に羽化をするなんて
でも 羽化するしかなかったの?
墓のないものばかりだ
雨に流されて流されて
蛇も蟻もトンボも私とは関係ないのに
どうして私の本性を こんなに試すんだろう
偽善ばかりで悪いなら生まれて悪いのか
刈られた草が 風に運ばれ雨に匂う
陽に乾いて枯れても柔らかく土をおおう
繁ることこそ 墓の名であると
守り人の杖が黙る
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