戒律/安部行人
 
なしには暮らしてゆけないという
治らぬ病がそうさせるのか


いずれきみの体は腐るだろう
それはきみを養ってきた肉たちの
精一杯の叛乱だ
生まれて死ぬだけの存在が言葉なしに放つ呪いだ


だからきみは手を洗え
肉食の作法を果てしなく洗練させろ
そして呪いと競いあって走れ
体が崩れ果てるその時まで


手を洗え
それがきみの
そしてぼくにとっても
ただひとつの戒律である。
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