子探し/salco
子を探す母親は
探して探して町じゅうを
探して探してあちこちを
空き地を路地を公園を
橋下を覗き川面に目を凝らし
袋小路を野を丘を
森を林を墓地を巡り
家という家訪ねて回り
隣の町を裸足で走り
子の名を呼んで夕陽に染まり
埋め立て現場を掘り返し
電信柱の蔭覗き
塀の向こうへ呼び掛けて
月の明かりに泣き叫び
時の隙にも分け入って
この世の果てへも行く様子
狂おしい眼を光らせて
咽の奥で声も涸れ
足はとうとう血にまみれ
石がガラスが苛めても
骨が土をかすっても
胸をはだけてまろびつつ
吾子の名を呼ぶいつまでも
探して探して時は経ち
時など忘れて子を探
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