よだれ/Ohatu
 

 どんなに後悔しても、喜びや悲しみは死なない
 それはたくさんの命の残り香に似ている 

 目を閉じるあなたを見ている
 揺れる肩は、それだけで物語になる

 あなたの口がわずかに開き、息が漏れる
 呪いのように湿った部屋を覆う

 このベッドが海だとすれば、もう助からないのに
 そんなことをもろともせず
 氷山は音を立ててますます隆起する
 どんな映画よりも絶望
 それなのに黙々と、手を伸ばし、掴む

 初めてのことをしたつもりなって
 ニュースにもならない事件を起こす
 よだれが
 しみを作る
 昔、神さまがしたように

 航海士が地図をなぞるよう
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