いつかの一葉/乾 加津也
 
きづく
星と椅子とで
いつか生きた証をとおもっていたひと

息吹く緑に
ひかりと風がふりそそぐ

問いはない
おだやかな招きがまぶたをおさえる

五月
まばゆい魂の軌跡にうなされそうになる

メロディや笑い声なら
蝉の発声器官でもするりとぬける

旅人かへらず
木々のおしめりとうつ伏した石塔

じめじめと苔がみなぎるので
朝から
わたしの指は嗚咽する

ときをくつがえして
わびしさのいろをきいて
さわるみかくで飛び散る天使をひろう

あきらめる
失望する
だれともつながらない世紀にむかう

あるかず
いきをととのえず
みうごきをやめて

きもちをにがしてやる
手のひらをひろげて
とけだした繭

かぞえるよろこび
むせびなくいとおしさ
ちいさくはじけるエックス

きてしまうおそれと
にげてゆく刹那
のこるべきは
かなしみとうつくしさ
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