奇跡は災難にやってくる/月山一天
バスケ大会の決勝で、本田クンにアピールしようとしたのが悪かった。
ボールをキャッチミス。左、親指を骨折。病院行き。
真っ白であったギブスは、すでに文字で埋め尽くされ、
ちょっとしたアート作品になりあがった。
「ギブスブス」は無いだろう、描かれた矢印が私の方に向いているのが許せない。
美術のクラス、鉛筆が削れずキレかけている私に手を差し伸べてくれたのは、
まさかの本田クン。
素直に器用に削られる鉛筆も、
目の前にいる彼も、
固まってしまっている私も全て、
信じられない。
日中夜、こんなシチュエーションを
妄想していた事を思い出す。
神様は本当にいるのだよ。きっとそうだ。
今、土砂降りの雨も、スコア68点の英語のテストも、ピカソ風だと言われた自画像も、
私の一日を台無しにしない、そんな日は未だかつてあっただろうか?
奇跡は災難にやって来る。
そう、何度もやってくる。
校舎前で鉢合わせになった彼に
「傘持てる?」
と問われた時、
私の脳裏にはもう「アイアイ傘」しかなかった。
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