雨の残りもの/真島正人
潔癖症の僕は
苦しくなってきたんだ
なんとなく不安が
よみがえってきて
かなえられなかった
古い願いが
まだここで足踏みしてるような
気がする
深夜はまるで
音のない特急列車さ
すごいスピードで僕たちを
連れ去る
かたちも影もないのに
確かにそこにあり
埋立地
地方放送局
湾岸の寂しい光景などを
連想させる
記憶は
果たして質量を持ち
燃料として
成り立つだろうか?
6月の雨が
まだどこかに残っていて
それが7月の終わりになっても
降り注いでいる
僕の知っている
いろんな景色が
雨に濡れたり濡れなかったりする
同じものの違うヴァージョンはいつも
人に錯覚を見せる
僕はそれを
並べたものに戸惑い
意味を探してしまうよ
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