黄金の子/木立 悟
空白のような雲
線は海に落ちつづけ
浪たちはみな空を見る
鳥か魚かわからぬ影が
こらえ切れない笑みのようにふるえて
空のかたすみに伝わってゆく
夜のはじまりに伝わってゆく
草からしたたる尾に触れて
子はひとときの手のひらになり
人から人へと燃えうつる火を
静かに静かにかわかしてゆく
この渦まくものたちは命だった
そしてふたたび命へもどる
青の羽が噴き出す泉へ
子はからだをひたしてゆく
茶色と金色の間の闇に
ろうそくの音はひろがって
沈んだ枯れ葉に隠れる魚たち
緑に飾られた花嫁の横顔
ひとときの小さな赤に染めてゆく
戻る 編 削 Point(3)