咲の婿取り/salco
 
葉月八日は身のためゆうて
この日は誰も船出しやーせん
凪いじゅうても泣き見るがやき
昔の昔はほりゃ無茶(わや)するもんもおったけんど、
へんこつ、権太が目にもの見せちゃるゆうて
葉月の八日に船出しよったけんど、
凪いじゅうても泣き見たがやき
いきおいでと浜で身悶え嫁御がおめき
返して呉れんと親が寝つくだけやった
咲の婿に取られたのやもん
咲の屍は沖合八尋の底で今もゆらゆら揺られゆう
光も届かぬ地獄の底で今でもゆらゆら揺られゆう

葉月八日の子の刻に人身御供よ村のため
数え十五で海神様の嫁御になった
きれえな長い髪をしちょったそう
いつやらほれっちゃあずる剥けて
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