帰り道/草野春心
 


  背中の曲がった老人が
  夕暮れに向かって歩いている
  歩きたいのだ
  だれも
  彼に杖を貸してはいけない



  赤ん坊を抱いた女が
  夕暮れに向かって歩いている
  愛したいのだ
  だれも
  彼女を阻んではいけない



  退屈が重なって
  しずかに心をしめつける
  夢はとうに終わって
  うすぐらい影だけが残る



  帰り道が
  夕暮れに向かって延びている
  ひとつひとつ
  ひたむきに
  夕暮れに向かって



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