冬瓜売りと石敢當/海里
 
冬瓜は夏の瓜
翡翠色に煮あげて冷やして食べます

石敢當さんの好物で
石敢當さんは
「これを食べると力が出るんだ」と
夏中ほくほく食べてたそうです

今では季節以外にも見かけるようになりましたが
やはり冬瓜は夏が素晴らしい
砲丸投げが出来そうな
そのまま砲弾にでもなりそうな充実した緑

かつて沖縄に雨あられと降り注いだものが
砲弾ではなく冬瓜であったら良かったのに

吹き荒れたものが鉄の暴風ではなく
深く浅く取り尽くせず今も取り残されているものが
不発弾などではなく冬瓜だったら良かったのに

石敢當さんはとても強い人だったので
島々ではT字路の突き当りにその名を彫った石を立てます
魔物はまっすぐにしか進めないので
T字路の突き当たりはそんな風にして払うのです

過去はいい
過去は取り戻せない
やり直せない
これから起きるすべての戦争に反対

冬瓜と石敢當の夏にかけて
行き止まりで
打つ手がないように見えても
他に仕方がないだなんて思わないで

     
過去作。短冊と落とし文月。
 
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