石と詩/海里
石の詩を書きたい
原石などではなく
その辺のただの石っころりんの
ひん岩とか、けつ岩とか、あんざん岩とか
まずその名前
貧血とか安産みたいだよね
それから
掘らなくても川原に転がってるホルンフェルス
なめらかな表面の無数のくぼみは
菫青石が剥がれ落ちた跡だそうが
菫青石ってつまりアイオライトのことなので
ゆっくりと
大きくなれたら宝石だったのに
針先のような大きさで剥がれ落ちていった
ウォーターサファイアたち
そんな風に
造岩鉱物たちの名前や
石に生まれて
石になりなおして
ひととき地上で陽を浴びるに至った悠久
何の母岩でも原石でも宝石でも鉱石でもなく
ただその石がその石であることだけの詩を書きたい
光るものをその身のうちに
たまたま持とうが持つまいが
ひともまたそのひとそのものでしかないように
ああそうか、詩を書きたいと思うことは
それだけで
詩のようなところがあるね
詩ではないけれどもね
踊るミクロラプトルより。
戻る 編 削 Point(2)