うつつと夢の間を縫うバスに乗って/石川敬大
いくつかの岬を丹念にまわったぼくらが
どこをどう通ってバス停までたどりついたのかたしかな記憶はない
時間には
時系列だけがあって
整合性は存在しないから
渡ってきた吊橋はたぶん霧のなかで壊れている
したたかに酩酊した
ゆうべの祭りの賑わいは
花火大会のまぼろしのように現実味がない
坂道に
さしかかる
九月の風のゆく手
路線バスの時刻表が現実からきえかかっているので
来るのか来ないのか
おぼつかなくて
うつつが夢のようで
ものみな死に絶えた夏の岬で
ぼくらは
やってくるはずのないバスを待っていた
戻る 編 削 Point(19)