あのライカのこと/番田
浜辺に砂が少しまきあがっている。男には、アイスクリーム売りや、赤いパラソルの貸し出し屋、肩もみ屋、サンオイル貸し、サーフィン教室の勧誘者が歩き回っている。中古屋は、その手の中に何も持っていなかった。男は午前中のまだ冷たい砂浜の上をうろうろしている。彼らは、肩にカメラを一つぶら下げている。それは彼の回りをダンスするように歩きまわっていく。子供たちを避けながらぼんやり歩いた。するとサッカーをしている少年が回り込んでいく。足下の上を、彼方の砂がまたまき上がっていた。砂へと歩けば、男のそばに白い船たちがいくつも浮かんでいるのが見えてきた。ボールのあみだす動きの足下には、やはりサッカーをやっている黒ずんでい
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