水面下の塵/薬堂氷太
 
顎(あご)を上げれば ほら
水面が見える所まで
来てる

蒼い天辺で 揺蕩(たゆた)う
陽光の揺らぎが
手を犯してゆく 日を夢見て

砂を踵(かかと)で慣らしながら
身体を引きずり歩く深海で

目が合った

露骨の魚

追いかけて 追いかけて
止まらない 病まない
焦燥に過ぎてゆく

何もかもが
色あせて

蒼く染まった この場所

陽光で爛れた腕を見て
足が震えているのがわかる

それを剥き出しにして
見せびらかすことを美徳とは思わないけれど

でも

甘い深海の水に切り離して浮かべ
他人のように見つめるのも

心苦しい

もう逃げたくないと私は瞳を掻き毟って
蒼の中を揺蕩(たゆた)う 私の身体が

形を成すまで

どうか見守ってもらえたなら

どうか慈しんでもらえたなら

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