洞窟にかける鍵/吉岡ペペロ
の経営者がシンゴに百元札をいちまい渡して
チップを渡して来てくれませんか、と頼んできた
せっかくだから、ご自分でお渡ししてきたらどうです、シンゴは渡すのがいやだった
でも仕方がない、やるとすっか、
シンゴは立ち上がって百元札を舞台に差し出した
歌目線の女の子がやわらかく張った手の平でそれをそっと押しかえした
さいごの電話を思い出した
シンゴがよろけるように席へと戻るのを皆が笑いながらむかえていた
こいつらもブランドもんとか、興味ないんだろうな、
シンゴたち一行がショーを見つめる
じぶんのなかのなにかを重ねている
ヨシミと歩いたさいごの夜を思い出す
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