洞窟にかける鍵/吉岡ペペロ
 
おばちゃんに先導されて何気ないビルをエレベーターで五階にあがった
ほそい通路をニ度ほど折れておばちゃんがドアをあけた
そこがコピーショップだった

数分のうちに千元のブランド時計が五百元になった
皆くちぐちに値切るのでふたりのおばちゃんが困り果てたふうを見せていた
シンゴは休憩室のようなところでコピー商品に興味のない連中とタバコを吸った
仕切りのむこう真剣な目をして品定めする者たちを感じながらまたヨシミを思い出していた

ヨシミはブランド品なんて興味がなかった、

それがいとしかった
でもいまこの瞬間、だれかにブランドものを、うつくしい心で、涙なんかうかべて、いま日本は朝の
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