現象:或る七月の夜/塔野夏子
 
頂点を仄青く明滅させる三角形が
部屋の片隅に居る

銀のお手玉をしながら
華奢なアルルカンが宙を歩いて過ぎる

星のいくつかが
音符に変わり また戻る

硝子瓶がひとりでに傾き
グレイの猫がこぼれ出る

結晶化した記号たちが
暗い川の橋の上に整列する

窓から窓が生まれ
その窓からまた窓が生まれ……

青緑の液状の眠りが
ベッドを音もなく波打たせている



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