やわらかな殻/るるりら
きのう手紙がとどきました。ふるさとのこころの箪笥から。
【前略 私は あなたの本当の母です。あなたは 親に「橋の下でひろってきた」と言われると喜んで、高貴な産まれを夢想するような娘でしたね。卵が先がニワトリが先かは、夕日が先が朝日が先かどうかと似ています。ニワトリが卵の後にみえるけれど、夕日がないと朝日はこないのです。
本当の母は私ですよ。私はいつも あなたの傍にいるのです。夏休みになりましたね。あなたには 何年の前から 私が あなたに課せた 夏休みの宿題を まだしてませんよ。あなたが宿題をするべきときがきたら、わたしは いつかきっと 蝸牛となって あなたの前に現れることでしょう。そのとき
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