黎明/salco
狂女の独白
いつもそれは夕刻よりも暗い夜明け
一日は、東の地底で死んだ胎児のように
いつ迄も、紫色の胎盤にまみれて
暗黒の硬い産道に引っかかっている
胎児の頸には硝子のつららが刺さっているから
だからあたしは不安で電灯を消す事が出来ない
このホルマリン霞みの長い廊下に一人で
産褥の母親達の呻き声に耐えて
こうして座って待つ事は出来ない
気のふれた、若い母親が叫んでいる
真っ黒な血まみれの死産児を産み落とそうとしている
光の破片が全身に刺さって死んだ
哀れなみどり児を今日も再た
ああ、ああ、母親の叫び声が聞こえる
癲狂院の一隅で、再た今日も赤ん坊を産み落とす
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