めぐりのうた/木立 悟
筆は短く
夜を夜に折る
弦も譜もなく
己れしかなく
奏でではなく
たたき たたき
放ち 返し
黒のしるしや水のしるしが
金と緑にうねり渦まき
夜や夜や
夜の底まで
明るく明るく立ち上がらせる
夜は夜を呑み干して
鉛の筆から枝の影から
蠢動を水に落としつづける
水など知らぬそぶりの顔で
遠いままの朝があり
痛みを下へ下へ下げゆく
触れるだけで回る細さ
光は進む 進む進む
柱の上へ上へ到く
花のない土地をすぎ
たったひとつのひまわりをすぎ
置き物のような双つ陽の
はざまの径をすぎてゆく
小さな花冠に照らされながら
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